新事業進出補助金の第二回公募が目前に迫っています。公表されている審査基準は全事業者にとって同じはずなのに、なぜ採択される計画とそうでない計画に分かれるのでしょうか。
私たちも多くの事業計画書作成を支援してきましたが、その理由は明確です。採択される計画は、審査基準の「行間」に隠された、評価を分けるポイントを高いレベルでクリアしているのです。審査員は事務局から提供された審査基準に沿って厳格に評価しますが、その基準を「どれだけ深く理解し、説得力をもって表現できているか」で差がつきます。
今回は、第一回公募の採択計画を分析して見えてきた、審査基準を真に満たすための「7つの重要チェックリスト」をご紹介します。提出前に、このリストで貴社の計画書を自己採点してみてください。
事業の「社会性」は明確か?
審査員は「なぜこの事業に、公的資金を投入する意義があるのか?」という視点で見ています。
✔ 減点されがちな計画
事業の目的が、自社の利益拡大の説明に終始している。補助金の必要性について、「資金が足りないから」という単純な理由しか書かれていない。
✔ 確実な配点のためのポイント
自社の事業を社会課題の解決(例:業界の人材不足、地域の過疎化、高齢化社会への対応など)に結びつけ、その事業がもたらす公共の利益を具体的に説明しましょう。その上で、「財務は健全だが、事業リスクが高いため自社だけでは挑戦できない。公的支援で挑戦を加速させたい」という論理で、補助金の必要性を訴えることが重要です。
市場の「成長性」は証明されているか?
「この市場は有望です」という言葉に、説得力はありません。熱意ではなく、客観的な証拠が求められます。
✔ 減点されがちな計画
市場の将来性について、「今後伸びると思われる」といった感覚的な記述に終始している。グラフやデータが添付されていても、出典が不明で信頼性に欠ける。
✔ 確実な配点のためのポイント
第三者機関(政府統計、業界団体、調査会社など)のデータを必ず引用し、新規事業の市場規模や市場の成長性(CAGRなど)を具体的に示しましょう。「誰が見ても成長が見込める市場である」と納得させることが、計画全体の信頼性の基礎となります。
事業の「優位性」は客観的か?
具体的な競合を複数社挙げ、「競合比較表」を作成しましょう。「価格」「性能」「サポート体制」といった項目で客観的に比較し、「だから当社が選ばれる」という理由を明確に打ち出すことで、初めて優位性が証明されます。自社の強みをアピールするのは当然ですが、主観で主張するだけに終わらせてはいけません。
✔ 減点されがちな計画
「他社にはない独自のノウハウが強みです」と主張するだけで具体的な比較がない。競合を1社だけ挙げ、表面的な分析で終わってしまっている。
✔ 確実な配点のためのポイント
具体的な競合を複数社挙げ、「競合比較表」を作成しましょう。「価格」「性能」「サポート体制」といった項目で客観的に比較し、「だから当社が選ばれる」という理由を明確に打ち出すことで、初めて優位性が証明されます。
売上計画の「解像度」は高いか?
「3年後に売上1億円」という目標だけでは、計画は絵に描いた餅です。その数字に至るまでの道のりが、手に取るように見えるかが問われます。
✔ 減点されがちな計画
売上目標が「シェア5%は狙えるため」といった曖昧な記述に留まり、算出の根拠が記述されていない。定性的な情報がなく、数字だけが独り歩きしている。
✔ 確実な配点のためのポイント
売上目標を「単価 × 顧客数 × 利用回数」のように、具体的な計算式にまで分解して示しましょう。さらに、「既に取引先から内諾を得ている」「具体的な引合いが〇件ある」といった定性的な情報を追記することで、計画のリアリティは飛躍的に高まります。
実行計画の「具体性」は十分か?
事業の成功は、優れたアイデアではなく、着実な実行にかかっています。
✔ 減点されがちな計画
事業の課題として「技術開発」だけを挙げ、他の経営課題を想定できていない。SWOTから導き出された課題に連動したスケジュールが記載されておらず、曖昧な記述になっている。
✔ 確実な配点のためのポイント
SWOT分析と連動させ、複数の課題を設定しましょう。 「技術」「オペレーション」「財務」「マーケティング」など多角的な視点から課題を挙げ、それぞれに具体的な解決策を提示します。そして、誰が・いつまでに・何をするのかを明確にした、詳細な実行スケジュール(ガントチャートなど)が不可欠です。
収益計画の「健全性」は示されているか?
補助金は、事業を成長させ、利益を生み出すためのものです。
✔ 減点されがちな計画
売上は伸びているが、コスト構造が甘く、営業利益が減少してしまっている。利益の出ない事業に、多額の人件費が計画されている。
✔ 確実な配点のためのポイント
営業利益が着実に増加していく収益計画を策定した上で、売上拡大と利益確保の両立が、事業の持続可能性と、賃上げの原資を担保する計画にしてください。
賃金計画の「好循環」は描けているか?
賃上げは、この補助金の最重要項目です。ここでは「成長と分配の好循環」が示せるかが問われます。
✔ 減点されがちな計画
新規雇用により「給与支給総額」は増えているが、「一人当たり給与支給総額」は伸び悩んでいる。賃上げの目標値は書いてあるが、その原資の出所である収益計画が連動していない。
✔ 確実な配点のためのポイント
「給与支給総額(雇用の拡大)」と「一人当たり給与支給総額(雇用の質)」の両方が、バランス良く成長していく計画が最も高く評価されます。増加した営業利益を原資として、この「2つの車輪」を力強く回していくストーリーを描き切ってください。
まとめ:チェックリストで計画の穴をなくす
第一回公募を申請した方は、いくつチェックが付いたでしょうか?もし、チェックが付かなかった項目があれば、そこが貴社の計画書の「伸びしろ」です。
「自社の計画のどこが弱いのか、客観的に診断してほしい」
そうお考えの方は、ぜひ一度、当社の無料相談をご利用ください。このチェックリストを基に貴社の計画をプロの視点で診断し、採択レベルに引き上げるための具体的な改善点をご提案します。